まぐろユッケ

一時期、東北の牛肉が出荷停止になった。

あの時、産地を問わず国産の牛肉の価格が暴落した。でも、流通しているものは大丈夫なんだろう。こんな時僕は、食品の危険性を心配するよりは、「心配のあまり過剰な行動に走る自己像」の方にアレルギー反応が出る。検査を通っているものは大丈夫じゃんか。しかも安い。むしろ食べ時だ。と考えたがる。でも我が家の食卓には牛肉が目立って増えたわけではなかった。

ひと頃よく買っていた焼肉用の牛肉が、その頃生協でたまたま出ていなかっただけのようだ(生協が意図的に取り扱いをしなかったのでは、というような臆測は無しね)。要するに妻は特別なことをせず、いつものように食料品を買っただけだった。無作為。

無知や無関心とは、一見紙一重のようだが。こういう時に狙って牛肉を買おうと考えるのは、むしろあざといと思った。ユッケのことも思い出す。食中毒があった頃、似た名前の焼肉店の店頭に貼紙があり、「当店は関係ありません。僕たちを助けてください」とあった。僕は助けに行かなかった。助けたくなかったのではない。焼肉店に食べに行く習慣が、我が家になかった。

「そもそも生で食べるとキケンである」と専門家がテレビで言っていた。

危険な食習慣が野放しになっていたのか。それとも、きちんと調理すれば安全だし今まで安全だったが規制が不完全だったので不心得な業者が出現したのか。真相がどちらであっても、第三者の専門家に訊けば答えは同じになる。訊かれた専門家は、自己に過失責任がかからないような答えを考えるからだ(そのように考えること自体は、基本的にはまともな発想だと思う)。テレビ局ははじめから訊かない方がよかった。大型スーパーのフロアの端に出店している持ち帰りすし店を見る。それから三階に上がって書店でブラブラする。降りてきてスーパーで缶入りハイボールとか朝食のパンとかを買って、レジを出てすし店の前に戻る。

閉店間際の値引きの札はまだ貼られていない。スーパーの売場内にも持ち帰り寿司コーナーはあって、そっちは50円引とか始まってたぞ。

自信があるんだろうな。もういいや買ってしまえ。「韓国風海鮮ちらし(温玉)」。「まぐろユッケ」のタレの袋がついている。載っているのはネギトロのようなものかしらん?。やはり牛ということはないんだな。すし店だし。スーパーの売場内の持ち帰り寿司コーナーの寿司の方は、実は当たったことがある。

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